ベトナムの特定技能「労働者提供契約」とは|受入れ企業の費用負担(派遣料・訓練費・航空券)

日高 拓郎
日高 拓郎行政書士(申請取次)
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ベトナムの特定技能「労働者提供契約」とは|受入れ企業の費用負担(派遣料・訓練費・航空券)

※この記事は、2026年10月9日時点の日本の法令と出入国在留管理庁(入管庁)の公表資料、ベトナムの法令(2026年6月30日施行の通達09/2026/TT-BNVまで)に基づいています。

労働者提供契約とは、ベトナムから特定技能外国人を新たに受け入れる企業が、ベトナム政府の認定を受けた送出機関と結ぶ契約です。募集する業種、人数、労働条件のほか、受入れ企業が負担する費用を決めます。

ベトナムの通達は、受入れ企業が負担する費用として、派遣料、ベトナムからの航空券、訓練費の3つを定めています。派遣料は、最低で基本給1か月分です。日本に在留する人を採用する場合、この契約は手続きの流れに出てきません。

目次
  1. 労働者提供契約とは
  2. 受入れ企業が負担する3つの費用
  3. 金額の決まりは、いつの通達によるものか
  4. 本人が送出機関に支払うサービス料の上限
  5. 日本側の決まり:保証金の禁止と、本人が払った費用の確認
  6. なぜ受入れ企業の負担が決められているのか
  7. 契約の前に確認すること
  8. 日本に在留する人を採用する場合
  9. よくある質問
  10. まとめ
  11. 参考資料

労働者提供契約とは

労働者提供契約は、受入れ企業とベトナムの認定送出機関が結ぶ、人材の提供と受入れの条件を決める契約です。入管庁は、ベトナムの制度上、ベトナムから新たに特定技能外国人を受け入れるときに、この契約を結ぶことが求められると案内しています。

契約を結んだ後は、認定送出機関を通じて、ベトナム内務省海外労働管理局(DOLAB)に契約の承認を申請します。ベトナムの法律は、承認を受けた後でなければ、送出機関は契約を履行できないと定めています。

承認の後に、送出機関が人材を募集し、受入れ企業が雇用契約を結びます。その先の推薦者表(ベトナム政府が承認する、特定技能外国人の一覧)と日本側の申請は、ベトナム人の特定技能で必要な「推薦者表」とはにまとめています。

ベトナムの法律が、労働者提供契約に書くと定めている主な事項
  • 契約期間、労働者の数、分野・職種・仕事の内容、就労場所
  • 労働条件、勤務時間と休憩時間、労働安全・労働衛生
  • 給与とその他の処遇、残業手当、賃金から控除される費用
  • 食事・宿泊・通勤の条件、健康診断、社会保険
  • 受入れ側が支払うサービス料(ある場合)、ベトナムと就労場所の間の交通費の負担
  • 契約を解除する条件と損害賠償、紛争を解決する方法

出典:出入国在留管理庁「ベトナムに関する情報」、「手続の解説」/在ベトナム日本国大使館「契約に基づいて外国で働くベトナム人労働者に関する法律(69/2020/QH14)仮和訳」第19条、第20条

受入れ企業が負担する3つの費用

特定技能でベトナムから受け入れる企業の費用として、通達の付録IIが定めているのは、派遣料、航空券、訓練費の3つです。ベトナム内務省の通達09/2026/TT-BNV(2026年6月30日施行)の付録IIが、日本向けの労働者提供契約の内容として定めています。

費用付録IIの定め支払い方
派遣料(受入れ側が送出機関に払うサービス料)最低で、基本給1か月分(1契約・1人あたり)送出機関の口座に振り込む
航空券ベトナムから就労場所までの労働者の航空券を、受入れ側が負担する定めなし
訓練費日本側の要件を満たすための訓練の費用。最低額は、外国語の訓練に1人5万円、職業技能の訓練に1人5万円受入れ側が、送出機関の口座に振り込む

付録IIが決めているのは最低額です。通達は、契約の内容は送出機関と受入れ側が合意して決めるが、この最低の条件は確保しなければならないと定めています。上限の定めは、付録IIにありません。

派遣料の基準は「基本給」です。付録IIは、どの金額を基本給とするかまでは書いていません。契約書では、基準にした金額を数字で確かめてください。

この通達の日本語訳は、公的機関から公表されていません(2026年10月9日時点)。この記事で通達09/2026について書いた部分は、ベトナム政府の法令サイトに掲載された原文を当事務所で訳したものです。法的な効力があるのは、ベトナム語の原文です。

出典:ベトナム政府 法令サイト「通達09/2026/TT-BNV」(2026年5月15日付)第1条、付録II のII

金額の決まりは、いつの通達によるものか

費用の決まりは、2021年の通達21/2021の付録IIに置かれ、2024年と2026年に差し替えられています。古い資料には、2021年の文言のまま説明しているものがあります。

通達特定技能の訓練費の定め
通達21/2021(2021年12月15日付)送出機関は労働者から訓練費を収受しない。受入れ側が全額を支払い、最低額は1人10万円。語学と技能を習得済みの労働者についての定めもあった
通達02/2024(2024年2月23日付)による改正日本語教育の費用として1人最低5万円以上、職業技能訓練の費用として1人最低5万円以上
通達09/2026(2026年5月15日付、6月30日施行)外国語の訓練に最低1人5万円、職業技能の訓練に最低1人5万円

現行の付録IIの訓練費の項にあるのは、受入れ側が支払う最低額と支払い方の定めです。2021年の通達にあった「送出機関は労働者から訓練費を収受しない」という文と、習得済みの労働者についての定めは、現行の付録IIにはありません。

派遣料(最低で基本給1か月分)と航空券の定めは、2021年の通達と2026年の通達で同じ内容です。

通達09/2026には、施行前の契約についての定めもあります。2026年6月30日より前に登録・承認された労働者提供契約で、労働者が出国していないものは、通達と内容が違う場合、修正・補充するか、結び直す必要があります。

出典:在ベトナム日本国大使館「通達21/2021 仮和訳、通達02/2024 新旧対照表(仮訳)」/ベトナム政府 法令サイト「通達09/2026/TT-BNV」第2条、第3条、付録II

本人が送出機関に支払うサービス料の上限

技能実習2号または3号を修了して特定技能になる人から、送出機関がサービス料を受け取ることはできません。通達09/2026の付録XIが、この場合の上限を0ドンと定めています。0ドンはサービス料の上限で、ほかの費用は別に定められています。

対象送出機関が本人から受け取れるサービス料の上限根拠
技能実習2号または3号を修了して、特定技能で働く人0ドン通達09/2026 付録XI
上の行に当たらない特定技能の人(試験に合格した人など)契約期間12か月ごとに賃金1か月分まで。36か月以上の契約は賃金3か月分まで法律69/2020 第23条第4項(当事務所の整理)

2行目は、付録XIに日本の特定技能についての定めが1行目しかないため、法律の一般の上限が当たると当事務所で読んだものです。

法律は、受入れ側がサービス料を支払った場合、本人から受け取れるのは、合意した額に足りない分だけだと定めています。受入れ側が支払った分は、本人が負担する額から差し引かれる形です。

送出機関が仲介者に支払う報酬の上限も、日本向けは全業種で0ドンです(通達09/2026 付録X)。

ベトナムでは、この法律の一部を改正する法律が2026年8月24日に国会で可決され、2027年3月1日に施行されます。改正後の条文は確認できていません(2026年10月9日時点)。

出典:ベトナム政府 法令サイト「通達09/2026/TT-BNV」付録X、付録XI/在ベトナム日本国大使館「法律69/2020/QH14 仮和訳」第23条/ベトナム政府電子新聞「改正法の可決(2026年8月24日)」

日本側の決まり:保証金の禁止と、本人が払った費用の確認

日本の法令は、本人から保証金を取ることを認めず、本人が外国の機関に払った費用は、額と内訳を理解して合意していることを求めています。受入れ企業は、自社が払う額だけでなく、本人が送出機関に払った額も確かめる立場にあります。

特定技能の基準のうち、費用に関するもの
  • 本人や親族などが、保証金の徴収など、名目を問わず金銭その他の財産を管理されていないこと
  • 雇用契約の不履行に違約金を定める契約など、不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約が結ばれておらず、結ばれる見込みもないこと
  • 本人が、雇用契約の申込みの取次ぎや活動の準備に関して外国の機関に費用を払っている場合は、額と内訳を十分に理解して合意していること
  • 受入れ企業が、保証金の徴収や違約金の契約があることを認識して雇用契約を結んでいないこと

入管庁の運用要領は、受入れ企業が保証金の徴収や違約金の契約を認識して受け入れた場合、欠格事由に当たり、5年間受入れができなくなるとしています。

外国の機関が関わって雇用する場合は、本人が徴収された費用の額と内訳を理解し、合意したうえで徴収されていることを、受入れ企業が確認するよう求めています。1号の人への事前ガイダンスでは、保証金・違約金の契約が違法であることを説明し、徴収がないことを確認します。

受入れ企業の基準の全体は、特定技能ビザとは?1号と2号の違い・対象19分野・受入れ企業の要件と手続きにまとめています。

出典:上陸基準省令 特定技能1号の項 第2号・第3号、特定技能基準省令 第2条第1項第6号/出入国在留管理庁「特定技能外国人の受入れに関する運用要領」(2026年8月)第4章

なぜ受入れ企業の負担が決められているのか

日本とベトナムの協力覚書(MOC)は、悪質な仲介機関の排除と、特定技能外国人の保護を目的にしています。覚書は、法令で認められていない手数料の徴収や、額と内訳を理解させないままの徴収を、両国が情報を共有する行為に挙げています。

背景には、来日前の費用の負担があります。入管庁が2021年12月〜2022年4月に技能実習生2,184人から聞き取った調査では、母国の送出機関に支払った費用の平均は52万1,065円で、ベトナムは65万6,014円でした。来日前に母国で借金をしていた人の割合は、ベトナムで80.0%です。

覚書は、受入れ企業の側にも決まりを置いています。採用の見返りに、送出機関や労働者(入管庁の和文仮訳では「従業員」)に金銭、航空券、ホテル代、接待を求めたり受け取ったりした受入れ企業には、ベトナム側は送出しを許可しないとしています。

出典:出入国在留管理庁「ベトナムとの特定技能に関する協力覚書(和文仮訳)」1、4(1)、7(1)、「技能実習生の支払い費用に関する実態調査の結果について」

契約の前に確認すること

契約の相手が、ベトナム政府の認定を受けた送出機関かどうかを、最初に確認します。入管庁は、認定送出機関の一覧と、認定を喪失した機関・一時停止された機関の一覧を公表しています。

入管庁は、ベトナム側から情報が届く時期によって、掲載している内容が最新でない場合があるとしています。契約書に署名する前に、もう一度見ておくと安心です。

送出機関が求職者の人選まで行うことは、職業安定法のあっせんに当たります。入管庁は、その場合、日本国内の職業紹介事業者としての許可が必要だと案内しています。受入れ企業が使う職業紹介事業者や認定送出機関も、職業安定法に反していないことが求められます。

送出機関から契約書の案が届いたら、次の点を条項で確かめてください。

  • 派遣料の額と、基準にした基本給の額
  • 訓練費の額(語学と技能の内訳)と、航空券の扱い
  • 支払いの時期と、振込先の口座
  • 本人が送出機関に支払う費用の額と内訳

当事務所でも、特定技能ビザの申請サポート(受入企業向け)で、送出機関から示された契約の条項と、日本側の申請書類が合っているかを確認するところからご相談いただけます。

出典:出入国在留管理庁「ベトナムに関する情報」、「フローチャート」注2

日本に在留する人を採用する場合

日本に在留するベトナム国籍の人を特定技能で受け入れる手続きの流れに、労働者提供契約は入っていません。入管庁の案内では、雇用契約、駐日ベトナム大使館での推薦者表の手続き、在留資格変更許可申請の順に進みます。

付録IIの費用は、労働者提供契約の内容として定められたものです。この契約を結ばない受入れ方には、当てはまる場面がないと当事務所では考えています。

技能実習を修了して帰国した人を、ベトナムから改めて受け入れるときは、新たに受け入れる場合の流れになります。労働者提供契約を結び、派遣料などを負担します。この場合、送出機関が本人から受け取れるサービス料の上限は0ドンです。

出典:出入国在留管理庁「手続の解説」、「フローチャート」

よくある質問

協力覚書(MOC)に、派遣料の金額は書いてありますか?

書いてありません。覚書が定めているのは、受入れ企業の費用分担の原則を日本側がガイドラインに含めることと、ベトナム側が手数料や費用の規則を作ることです。「基本給1か月分」などの金額は、ベトナムの通達の付録にあります。

帰国するときの航空券は、誰が負担しますか?

付録IIが定めているのは、ベトナムから就労場所までの航空券です。帰国の旅費は、日本の特定技能の基準に定めがあります。本人が帰国の旅費を負担できないときは、受入れ企業が負担します(特定技能基準省令第1条第2項第1号)。

育成就労でも、同じ決まりですか?

別の決まりです。育成就労(2027年4月1日施行)では、送出機関が本人から徴収できる費用の上限を、月給の2か月分までとすることが決まっています。制度の全体は育成就労制度の解説にまとめています。

まとめ

労働者提供契約は、ベトナムから特定技能外国人を新たに受け入れる企業が、認定送出機関と結ぶ契約です。受入れ企業は、派遣料(最低で基本給1か月分)、ベトナムからの航空券、訓練費(最低で語学5万円と技能5万円)を負担します。金額は、2026年6月30日施行の通達09/2026の付録IIによるものです。

契約の前に、相手が認定送出機関かどうかを入管庁の一覧で確認してください。契約書の案が届いたら、派遣料の基準にした基本給、訓練費の内訳、本人が支払う費用の額を条項で確かめます。

参考資料

執筆者

日高 拓郎
日高 拓郎

行政書士(申請取次)。ジプニー行政書士事務所 代表。千葉県行政書士会所属(登録番号 第25101585)。
フィリピンの現地法人で責任者を務めた後、2023年に株式会社ジプニー(登録支援機関)を創業。2025年にジプニー行政書士事務所を開業。

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