不法就労助長罪に「欠格事由」追加へ|入管庁が要請、2027年4月の罰則強化とあわせて解説
出入国在留管理庁が、不法就労助長罪で有罪になった事業者を各業法の「欠格事由」に加えるよう、関係省庁へ要請する方針を固めたと報じられました。欠格事由に加わると、一定期間は同じ業種の事業ができなくなります。
この動きは、入管庁が2026年5月22日に公表した「不法滞在者ゼロプラン~強力推進パッケージ~」の中に位置づけられています。同じ資料には、罰則そのものの引き上げ(2027年4月施行予定)や、摘発の強化も並んで盛り込まれています。
この記事では、外国人材を受け入れる企業を対象に、今回の要請の中身と、あわせて動いている罰則強化のスケジュールを整理します。
この記事でわかること
- 不法就労助長罪の「欠格事由」追加が、入管庁のどの施策の中に位置づけられているか
- 現時点で決まっていることと、まだ決まっていないことの違い
- 2027年4月に施行される罰則強化の内容
- 外国人材を受け入れる企業が今の段階で意識しておきたい点
不法就労助長罪、まずおさらい
入管法73条の2は、外国人に不法就労をさせた人、またはあっせんした人を処罰する規定です。現行の法定刑は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(併科可)。実際に雇用した企業だけでなく、業として人材をあっせんした側も対象になります。
この規定は「知らなかった」では済まないところに難しさがあります。故意がなくても、注意義務を怠っていたと判断されれば処罰の対象になり得るためです。技人国や特定技能で外国人を受け入れている企業にとって、決して他人事ではない規定だといえます。
今回の要請の中身:欠格事由の追加提案
入管庁の公式資料「不法滞在者ゼロプラン~強力推進パッケージ~」には、次の一文があります。
不法就労助長罪を各業法の欠格事由に盛り込むことを提案する(法改正が必要)。
これは、不法就労助長罪で有罪になった事業者について、他の業種の許認可を新たに取れなくする、または既存の許認可を取り消す仕組みを、関係省庁に働きかけていくという内容です。
現状、不法就労助長罪はすでに労働者派遣事業と有料職業紹介事業の欠格事由になっています。この2業種だけにとどまっていた仕組みを、他の業種にも広げようというのが今回の要請です。報道では具体例として、自動車の解体・保管を行う「ヤード」業が挙げられており、公式資料でも「不適正ヤード対策」が同じ並びで記載されています。
現行の多くの業法は、「拘禁刑以上」を欠格事由の基準にしています。罰金刑どまりであれば、同じ事業を続けられるということです。今回の提案でもうひとつ注目したいのは、罰金刑でも欠格対象に含めるかどうかが論点になっている点です。実現すれば、これまで「罰金で済んだから事業は継続できる」と考えられていたケースにも影響が及びます。
まだ決まっていないこと
現時点の資料からわかるのは「提案する」という方針までで、対象になる業法の具体名や、欠格になる期間の年数までは明記されていません。法改正には関係省庁との調整が必要で、この記事を書いている時点ではまだその段階にあります。
参考までに、建設業法や古物営業法など既存の許認可制度では、「刑の執行が終わってから5年間」を欠格期間とする例が多く見られます。今回の提案がどの水準に落ち着くかは今後の調整次第ですが、既存制度と同水準になる可能性は考えられます。
すでに決まっている罰則強化:2027年4月施行
欠格事由の話とは別に、不法就労助長罪そのものの法定刑引き上げはすでに法律として成立・公布済みです。2024年6月に成立した改正入管法により、法定刑は「3年以下の拘禁刑・300万円以下の罰金」から「5年以下の拘禁刑・500万円以下の罰金」へ引き上げられます。施行は2027年4月1日と、政令で定められています。
もうひとつ押さえておきたいのが両罰規定です。入管法76条の2により、実際に違反行為をした従業員個人だけでなく、その所属企業にも罰金刑が科される仕組みになっています。企業としての責任が個人の行為の延長線上にあるという構造は、施行日を迎えても変わりません。

摘発の強化も同時に進む
強力推進パッケージには、欠格事由・罰則の話にとどまらず、摘発の実効性を高める施策も並んでいます。合同・入管単独の摘発強化、SNS等を対象にしたサイバーパトロールの実現、通報を促す仕組みの検討などが新規施策として盛り込まれました。制度面の見直しと、現場での摘発強化が同じパッケージの中で一体的に進められている状況です。
技人国受入企業にとっての影響
技人国のビザ自体は許認可事業ではないため、今回の欠格事由の議論に直接含まれるわけではありません。ただし、外国人材の受け入れに関わる周辺業務として労働者派遣事業や有料職業紹介事業を兼業している企業には、すでに現行制度の欠格事由が及んでいます。当事務所でも技術・人文知識・国際業務ビザの申請サポートを行っており、受入企業の体制づくりに関わる中で、この周辺業種の許認可への影響を相談されることが予想されます。
対象業種が今後広がれば、技人国の受入企業が別に営む建設業やその他の許認可事業にも波及する可能性があります。目の前の業種だけでなく、自社が保有している許認可全体を意識しておく価値がある局面です。
技人国をめぐっては「名目と実態のズレ」が審査で問題視される流れがすでにあり、技人国ビザの審査厳格化|「名目と実態の乖離」で不許可になる事例と企業の対応策で整理した内容と、根っこの部分は共通しています。実際の業務実態を自社で把握し、説明できる体制を整えておくことの重要性です。
派遣形態で技人国を受け入れている企業であれば、派遣先企業自身が不法就労助長罪のリスクを直接負う立場になっている点も注意すべきです。詳しくは技人国の派遣形態 新ルールと派遣先企業の責任で解説しています。
よくある誤解・注意点
「罰金刑どまりなら事業を続けられる」という誤解 現行の多くの業法は拘禁刑以上を欠格事由の基準にしていますが、今回の提案は罰金刑も対象に含める方向性を持っています。実現すれば、この前提が崩れる可能性があります。
「技人国だから関係ない」という誤解 直接の対象業種になるかどうかは今後の調整次第です。技人国の受入企業であっても、労働者派遣・職業紹介・建設業など他の許認可事業を兼業している場合は、現時点でもすでに影響がある、または今後影響を受ける可能性があります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 欠格事由の追加はいつから始まりますか? まだ確定していません。関係省庁への「提案」の段階で、法改正が必要です。対象業法や欠格になる期間は、今後の調整で決まっていきます。
Q2. 罰則の引き上げはいつからですか? 2027年4月1日からです。法律自体は2024年6月にすでに成立・公布されており、施行日だけが先の日付に設定されている状態です。
Q3. 技人国の受入企業にも影響しますか? 技人国のビザ自体は許認可事業の対象ではないため、直接欠格事由の対象になるわけではありません。ただし、外国人雇用に関する規制全体が強まっている流れの一部として捉えておくのが実務的です。
Q4. 今の段階で何をしておけばいいですか? 制度の詳細が固まる前の段階でも、受け入れている外国人材の業務実態を自社で正確に把握し、説明できる状態にしておくことは共通して有効です。当事務所では受入企業ごとの状況に合わせて、都度確認を行いながらサポートしています。
まとめ
- 入管庁は「不法滞在者ゼロプラン~強力推進パッケージ~」の一環として、不法就労助長罪を各業法の欠格事由に加えるよう関係省庁へ要請する方針を固めた
- 対象業法の具体名や欠格期間は未確定で、法改正が必要な段階
- 罰則強化(3年・300万円→5年・500万円)はすでに法律として成立・公布済みで、施行は2027年4月1日
- 両罰規定により、違反した個人だけでなく所属企業にも罰金刑が科される
- 摘発強化・サイバーパトロールの実現などもあわせて進められており、制度と現場運用の両面で外国人雇用への監視が強まっている




