【2024年改正対応】技人国の労働条件通知書(雇用契約書)の書き方|外国人雇用の必須項目と特有の注意点
技人国(技術・人文知識・国際業務)ビザの申請書類リストには、「労働基準法第15条第1項及び同法施行規則第5条に基づき、労働者に交付される労働条件を明示する文書 1通」と書かれています。これが労働条件通知書または雇用契約書を指しています。
労基法に基づく書類なので、雛形は厚生労働省が公開していて、社内テンプレートを持っている企業も多いかと思います。ただ、技人国の申請に出す文書として整えようとすると、通常の労働条件通知書には書かれていない項目を追加する必要があります。これを押さえないまま提出すると、要件は満たしているのに不許可になる、というケースが発生します。
この記事では、労働条件通知書と雇用契約書のどちらを出すべきか、2024年4月施行の労基法施行規則改正で追加された明示事項、外国人雇用で必須となる4つの特有条項、業務内容欄のNG表現とOK表現、入管の電話調査対策までを順に説明します。
なお、技人国ビザ全体の制度説明は技人国ビザ完全ガイドでまとめています。本記事は申請書類のうち「労働条件を明示する文書」に絞った記事となります。
この記事でわかること
- 労働条件通知書と雇用契約書、入管申請ではどちらを出すべきか
- 労基法15条1項+施行規則5条で求められる絶対的明示事項(2024年改正対応)
- 外国人雇用で必須となる4つの特有条項(停止条件・在留資格喪失時の対応・給与同等性・母国語訳)
- 業務内容欄のNG表現とOK表現
- 入管法上の「報酬」に含まれるもの・含まれないもの
- 入管が外国人本人に行う電話調査と書類の整合性
- 雇用契約書テンプレートの構造(11項目構成)
労働条件通知書と雇用契約書、入管申請で出すべきはどっち?
入管庁の公式必要書類リストには「労働条件を明示する文書」とだけ書かれていて、「労働条件通知書」と「雇用契約書」のどちらを指すかまでは明示されていません。実務上は両方とも受理されますが、性質と入管審査での扱いが異なります。
労働条件通知書は、労基法15条1項に基づき、使用者が労働者に対して労働条件を一方的に通知する書類です。労基法上の法定義務で、違反すると30万円以下の罰金が科されます(労基法120条)。労働者の署名はありません。
雇用契約書は、使用者と労働者の双方が労働条件に合意した証として、双方の署名・捺印を行う書類です。法定義務はないものの、双方合意の証拠として作成するのが日本の労働実務の標準です。
つまり、技人国の申請に出す文書として実務的に最適なのは、「労働条件通知書 兼 雇用契約書」として両者の機能をまとめた書面です。1通で法定義務を満たしつつ、双方署名による合意証明にもなり、入管審査でも有利に働きます。
ここがやや分かりにくいのですが、入管庁の公式リストの文言は「労働条件を明示する文書」であって、「労働条件通知書のみ」と限定しているわけではありません。雇用契約書(労働条件を網羅した内容のもの)でも、兼用書面でも要件を満たします。

労基法15条1項+施行規則5条で求められる絶対的明示事項
労基法施行規則5条1項は、書面で明示すべき項目(絶対的明示事項)を定めています。2024年4月施行の改正で項目が追加されており、現行ルールに沿って書く必要があります。
2024年4月以前から定められている絶対的明示事項
- 労働契約の期間
- 就業の場所及び従事すべき業務の内容
- 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無
- 休憩時間、休日、休暇、交替制勤務における就業時転換に関する事項
- 賃金(退職手当及び臨時の賃金等を除く)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期、昇給に関する事項
- 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
2024年4月施行の改正で追加された明示事項
- 就業場所・業務の変更の範囲(全労働者対象):採用時の就業場所・業務だけでなく、配置転換等によって今後変更される可能性のある範囲も明示する
- 更新上限の有無及びその内容(有期労働契約の場合):通算契約期間または契約更新回数の上限がある場合、その上限を明示する
- 無期転換申込機会及び無期転換後の労働条件(有期労働契約で無期転換申込権が発生する場合)
特に注意したいのが「就業場所・業務の変更の範囲」です。技人国は専門業務に従事することが在留資格の前提なので、変更範囲を曖昧に書くと「単純労働への配置転換が想定される雇用」と疑義を招く恐れがあります。「変更の範囲:当社の本社及び支社のうち、人文科学(経営学・法学)の知識を活用する部署」のように、技人国の活動範囲内に限定する書き方が安全です。
外国人雇用で必須となる4つの特有条項
労基法上の絶対的明示事項を満たしただけの労働条件通知書では、技人国の申請として不十分です。外国人雇用に特有の4つの条項を追加します。

1. 停止条件(在留資格許可を契約発効の条件とする)
「本契約は、申請人について日本国の在留資格認定(または変更・更新)が許可されることを停止条件とし、許可されない場合には契約は発効しない」という趣旨の条項を入れます。
これがないと、ビザが下りないにもかかわらず契約が発効した形になり、不法就労助長罪のリスクが生じます。入管側にも「会社が不法就労に加担しないスタンスを明示している」ことが伝わります。
2. 在留資格喪失時の対応
在留期間更新が認められなかった場合や、何らかの理由で在留資格を失った場合、雇用契約は当然終了するという条項を加えます。「申請人が在留資格を喪失した場合、または更新が許可されない場合には、本契約は終了する」と明記します。
3. 給与の同等性(日本人と同等以上)
技人国の上陸基準省令第3号は「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること」を要求しています。給与額そのものに加えて、入管法上の「報酬」の定義も意識して記載します(次章で詳述)。
4. 母国語訳または英語訳の併記
外国人本人が雇用条件を正確に理解していることを示すために、日本語版に加えて、本人が理解できる言語の翻訳版を作成します。最近の入管実務では、審査官が外国人本人に電話で雇用条件を確認することが増えており、本人の回答が契約書と矛盾すると不許可になります。
厚生労働省は労働条件通知書の多言語版テンプレート(英語・中国語・ベトナム語・韓国語・インドネシア語・ポルトガル語・スペイン語等)を公開しているので、これをベースに自社用にカスタマイズすると効率的です。
業務内容欄のNG表現とOK表現
業務内容欄は、技人国審査で最も重視される項目のひとつです。雇用理由書(技人国の雇用理由書の書き方)と同じく、抽象的な業務名だけだと不許可リスクが高まります。
NG表現と書き換え例
- ❌ 「営業職」 → ⭕ 「東アジア(中国・韓国)の代理店向け技術営業、新規取引先の開拓、契約条件の交渉、製品技術仕様の説明(中国語・韓国語)」
- ❌ 「経理業務全般」 → ⭕ 「月次・年次決算業務、海外子会社(中国・ベトナム)の会計データ収集と連結決算用の調整、IFRSと日本基準の差異対応」
- ❌ 「マーケティング業務」 → ⭕ 「東南アジア向けの市場調査企画と実施、現地代理店からのデータ集計、競合分析レポート(四半期ごと)の作成」
- ❌ 「システム開発」 → ⭕ 「Java/Spring Boot を用いた業務システムのバックエンド開発(要件定義・基本設計・詳細設計・実装・単体テスト)」
書き方の3原則
- 動詞を増やす:「業務」で締めず、「企画する/設計する/調整する/作成する」など具体的な動詞を入れる
- 数字や対象を入れる:取扱国・件数・期間・対象規模などを具体化する
- 専門知識・ツールを明記する:使う言語・フレームワーク・基準・対象市場などを示す
雇用契約書の業務内容欄と、別途提出する雇用理由書の業務記述は完全に整合させる必要があります。両者で内容がズレていると、入管側に「実態と契約のズレ」を疑われます。当事務所では技術・人文知識・国際業務ビザの申請サポートを行っており、雇用契約書のドラフト作成・添削、雇用理由書との整合性チェック、外国人特有の4条項の組み込みまで一貫して対応しています。
入管法上の「報酬」に含まれるもの・含まれないもの
技人国の上陸基準省令は「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上」を要求していますが、入管法上の「報酬」は労働基準法上の賃金とは範囲が違うため注意が必要です。
報酬に含まれるもの
- 基本給
- 賞与(支給が見込まれるもの)
- 資格手当・役職手当(業務に関連する固定的手当)
- 業務に関連する固定的な歩合給
報酬に含まれないもの
- 通勤手当(実費弁償的なもの)
- 扶養手当(家族構成による手当)
- 住宅手当(家賃補助的なもの)
- 流動的な残業手当(変動性が高いもの)
たとえば「月給24万円(基本給18万円+住宅手当3万円+通勤手当1万円+資格手当2万円)」と書いた場合、報酬として評価されるのは「基本給18万円+資格手当2万円=20万円」です。同社の同職種日本人の報酬と比較する際も、この基準で見ます。
ここを誤解すると、「月給24万円で書いていれば日本人と同等」と思い込んで、実は基本給ベースで日本人より低い、というケースが発生します。雇用契約書は、報酬の内訳を手当別に明確に分けて記載するのが安全です。
母国語訳と入管の電話調査対策
最近の入管実務で増えているのが、審査期間中に入管審査官が外国人本人に電話で雇用条件を確認する運用です。
電話調査で確認される典型的な内容:
- 業務内容の理解(「あなたはどんな仕事をする予定ですか?」)
- 給与額の理解(「月給はいくらですか?」)
- 勤務地の理解(「どこで働く予定ですか?」)
- 雇用形態(「正社員ですか、契約社員ですか?」)
ここで本人の回答が雇用契約書の記載と食い違うと、「申請内容を本人が理解していない=書類上の合意が形式的なだけ」と判断され、不許可リスクが上がります。
対策として、雇用契約書は次の構造で作成します。
- 日本語版(正本):法的効力を持つ正式な契約書
- 母国語版または英語版(参考訳):本人が内容を理解する用
- 末尾に「申請人は本契約の内容を、母国語訳または英語訳によって十分に理解した上で署名している」という確認文を追加
これで、電話調査で本人が契約内容を返答できる体制になります。
よくある誤解と不許可になりやすい書き方
実務でよく見られる誤解と不許可パターンを4つ示します。
誤解1:労基法を守っていれば入管要件も満たせる
労基法上の絶対的明示事項を満たしただけでは、技人国の特有条項(停止条件・在留資格喪失時対応・母国語訳)が抜けています。労基法と入管法は別の要件として、両方を満たす書面に整える必要があります。
誤解2:契約期間を「3か月」「6か月」と短く設定する
「お試し期間として短い契約期間で始めたい」という発想で契約期間を3〜6か月に設定すると、入管側が「これは安定的な雇用ではない」と判断し、在留期間も短期間しか出ない、または不許可になることがあります。技人国の在留期間は最長5年なので、雇用契約期間も1年以上または無期雇用にするのが標準です。
誤解3:業務内容を「広く書いておけば後で柔軟に対応できる」
「業務内容:当社が指示する業務全般」のような広い書き方は、実態と契約のズレを生じやすく、入管側から疑義を持たれます。入社時点で確定している業務を具体的に書き、変更範囲は別途「変更の範囲」欄に記載する構造にします。
誤解4:給与を「月給○○円」とだけ記載する
報酬の内訳が分からない記載だと、入管が「報酬の同等性」を判定できません。基本給・諸手当・賞与の内訳を手当別に明確に分けて記載します。住宅手当や通勤手当は入管法上の報酬に含まれないため、内訳が分かることで誤解を防げます。
雇用契約書テンプレート(11項目構成)
雇用契約書は次の構造で作成します。固有の数字・名前・業務内容は案件ごとに書き換えてご利用ください。
書類冒頭
- 作成日(右上)
- タイトル:労働条件通知書 兼 雇用契約書
- 使用者欄:会社名・所在地・代表者名・代表印
- 労働者欄:氏名・国籍・在留資格(または「在留資格申請中」)
1. 契約期間
- 期間の定めなし/期間の定めあり(◯年◯月◯日〜◯年◯月◯日)
- 有期の場合:更新の有無、更新の判断基準、更新上限
2. 就業の場所及び業務の内容
- 就業場所(採用時):本社・支店等を具体的に
- 就業場所の変更の範囲:「当社の本社及び支社のうち、人文科学(経営学)の知識を活用する部署」など、技人国の活動範囲内で記載
- 業務の内容(採用時):具体的な業務を5項目以上、動詞・数字・専門知識を含めて
- 業務の変更の範囲:採用時業務と関連する範囲で限定的に
3. 始業・終業時刻、休憩、所定労働時間
- 始業・終業時刻
- 休憩時間(労基法上の最低基準を満たすこと)
- 所定労働時間
- 所定労働時間を超える労働の有無
4. 休日・休暇
- 週休日(曜日指定)
- 法定休日
- 年次有給休暇の付与基準
- その他の休暇
5. 賃金
- 基本給:月額◯◯円
- 諸手当:手当名と金額(資格手当・役職手当・住宅手当・通勤手当・扶養手当を分けて)
- 賞与:年◯回/年間想定額◯◯円(または「業績に応じて支給」)
- 賃金の支払い方法・締切日・支払日
- 昇給に関する事項
6. 退職・解雇
- 自己都合退職の予告期間
- 定年(該当する場合)
- 解雇事由
7. 社会保険・労働保険
- 健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険の加入有無
8. 在留資格に関する条項(技人国特有)
- 本契約は、申請人について日本国の在留資格認定(または変更・更新)が許可されることを停止条件とし、許可されない場合には契約は発効しない
- 申請人が在留資格を喪失した場合、または更新が許可されない場合には、本契約は終了する
9. 母国語訳・理解確認(技人国特有)
- 本契約書には、申請人の母国語訳または英語訳を添付する
- 申請人は本契約の内容を、母国語訳または英語訳によって十分に理解した上で署名している
10. その他
- 服務規律・就業規則の適用
- 個人情報の取扱い
- 機密情報の保持
11. 署名
- 使用者:会社名・代表者名・印
- 労働者:氏名・印(自署)
- 作成日
この構造で作成すれば、労基法上の絶対的明示事項(2024年改正含む)と、技人国特有の4条項を両立できます。
よくある質問
Q1. 内定通知書を雇用契約書の代わりに提出してもよいですか? 内定通知書は使用者が一方的に内定を伝える書面で、労働条件の明示は含まれていないことが多いため、雇用契約書の代わりにはなりません。技人国の申請には、労働条件を網羅した労働条件通知書または雇用契約書を別途用意します。
Q2. 業務委託契約や請負契約でも技人国は取れますか? 取れる場合があります。技人国の在留資格は「本邦の公私の機関との契約」を前提としており、雇用契約に限定されていません。ただし、契約形態に応じて契約期間や報酬の支払い方が大きく変わるため、業務委託・請負の場合は契約書の作成段階で在留資格との整合性を確認することをおすすめします。
Q3. 厚生労働省の労働条件通知書テンプレートをそのまま使ってよいですか? 労基法上の絶対的明示事項(2024年改正分も含む)は完全にカバーされていますが、技人国の入管申請に出すには次の5点を補完する必要があります。
- 停止条件(在留資格許可を契約発効の条件とする条項)の追記
- 在留資格喪失時の対応条項の追記
- 報酬の内訳明示(基本給と諸手当を分けて記載)への書式変更
- 業務内容欄の具体化(業務を5項目以上に分け、動詞・数字・専門知識を含めて記載。スペースが足りない場合は別紙で添付)
- 理解確認文(「申請人は本契約の内容を母国語訳または英語訳によって十分に理解した上で署名している」)の追記
厚労省テンプレートはあくまで労基法準拠の書面として完成しているので、これらを追加・改修することで技人国対応版に転換できます。
Q4. 雇用契約書を後から修正したい場合、入管申請に影響しますか? 契約期間・業務内容・給与など主要項目を修正すると、就労資格証明書の交付申請を別途行うか、次回更新時に新条件で審査されることになります。重要な変更は事前に検討してから契約書を修正するのが安全です。
Q5. 「まず1年契約で様子を見たい」と考えています。期間の定めありでも技人国は取れますか? 期間の定めありの有期契約でも問題なく認められます。ただし、契約期間が短いと在留期間も短くなる傾向があり、1年契約なら在留期間も1年が標準です。「長く働いてほしいが採用判断に迷う」のであれば、無期雇用+試用期間3〜6か月の構成にするほうが、在留期間が長く出やすく更新の手間も減らせます。有期契約を選ぶ場合は、2024年改正で必須となった「更新の有無・判断基準・更新上限」を労働条件通知書(雇用契約書)に必ず記載してください。
まとめ
技人国の申請に出す労働条件通知書(雇用契約書)について、要点をまとめます。
- 入管申請には「労働条件通知書 兼 雇用契約書」の兼用書面が実務的に最適
- 労基法施行規則5条の絶対的明示事項を2024年改正対応で網羅する(就業場所・業務の変更の範囲、有期契約の更新上限、無期転換申込機会)
- 外国人雇用特有の4条項を必ず追加する(停止条件・在留資格喪失時の対応・給与同等性・母国語訳)
- 業務内容欄は動詞・数字・専門知識を入れて具体的に書く
- 入管法上の「報酬」と労基法上の「賃金」は範囲が違う。手当別に内訳を明記する
- 入管の電話調査対策として、母国語訳と理解確認文を添える
雇用契約書は、要件を形式的に満たすだけでなく、実態として外国人本人が条件を理解し、入管審査の電話調査でも整合性が取れる状態にしておくことが大切です。
雇用契約書の作成にあたって判断に迷うケースや、社内ドラフトの添削が必要な場合は、お気軽にご相談ください。




