育成就労の外部監査人は何をするのか|監理支援機関の仕事との違いと、頼めない業務
育成就労制度では、監理支援機関に外部監査人を置くことが許可の基準になりました。選任は必須ですが、ではその人に何を頼めるのかは、意外とはっきりしません。
実務でいちばん問題になるのは、ここです。育成就労外国人との面談や宿泊施設の確認まで外部監査人がやってくれると考えていると、体制の見込みが崩れます。これらは監理支援機関自身の業務で、外部に任せることはできません。
この記事では、外部監査人が関わってくる2つの場面と、そこで監理支援機関の側が何を用意し、何は自分たちでやり続けるのかを整理します。外部監査人の制度上の位置づけや、誰が就任できるのかは育成就労の外部監査人とは?設置義務・なれる人・監査の内容で扱っています。
この記事でわかること
- 外部監査人が関わってくるのは、大きく2つの場面だということ
- 事務所に来られたとき、誰が対応し、何を見られるのか
- 受入企業への監査に同行されるとき、何が起きるのか
- 外部監査人に任せられない業務はどれか
- 監理支援機関が自分でやり続ける3つの現場業務
- 外部監査人に見られやすいポイント
- 報告書が2種類あり、それぞれどこへ行くのか
外部監査人が関わるのは、大きく2つの場面です

ひとつは、監理支援機関の事務所に来て、業務の状況を確認する場面。3か月に1回以上の頻度です。
もうひとつは、監理支援機関が受入企業に行う監査に、同行する場面。こちらは1年に1回以上になります。
どちらも、確認した結果を書類にして監理支援機関へ渡すところまでがセットです(規則第47条第3項)。裏を返せば、これ以外の場面で外部監査人が動くことは制度上想定されていません。
① 事務所に来られたとき——対応するのは責任役員と監理支援責任者です
外部監査人が来るのは、監理支援機関の事務所です。受入企業ではありません。
このとき対応するのは、現場の担当者ではなく次の2人になります。
- 責任役員(監理支援事業に責任を有する役員)
- 監理支援責任者(事業所ごとに置かれている責任者)
外部監査人はこの2人から業務の遂行状況について報告を受け、そのうえで事業所の設備を確認し、帳簿書類に目を通します。日程を組むときは、この2人が同席できる日を押さえる必要があります。担当者だけで受けて済ませられる性質のものではありません。
回数は事業所の数で決まります
3か月に1回以上というのは、事業所ごとの頻度です。事業所が3か所あれば年間で最低12回、1か所なら年4回、受け入れることになります。
許可証は監理支援事業を行う事業所ごとに交付されるので、どこが「事業所」に当たるかは許可の内容で決まります。外部監査人を探す段階で、自機関の事業所がいくつあるかを整理しておかないと、話が噛み合いません。
帳簿は、事前に電子で渡しておけます
帳簿を電子データで保存しているなら、訪問の前に電子的に渡して、先に確認してもらうことが認められています。当日の負担を軽くするために使える余地です。
ただし、その帳簿が事業所にきちんと備え付けられているか、事前に渡した資料が実態と合っているかは、現地で確認されます。設備の確認も現地でなければできません。事前に渡したから訪問は不要、という運用にはなりません。
② 受入企業への監査に同行されるとき——見られているのは監査のやり方です
年1回以上、監理支援機関が受入企業に対して行う定期監査に、外部監査人が同行します。
ここで押さえておきたいのは、外部監査人は受入企業を監査しに来るのではないということです。監理支援機関の監査が適正に行われているかを見に来ています。外部監査人は監理支援機関の役職員ではなく、監査業務そのものには関われない立場なので、実際のやり方を自分の目で確認する機会として同行する、という組み立てになっています。
つまり同行監査で見られているのは、受入企業の労務管理ではなく監理支援機関の監査の進め方です。定められた方法で監査が行われているかどうか、という一点に尽きます。何をどこまで確認されるかの細目は示されていないので、まずは定期監査で行うべき5つの項目(後述)がその場できちんと実施されている状態にしておくことになります。
「1年に1回以上」の数え方に、落とし穴があります
同行監査は、事業年度中に1回以上実施したうえで、前回の実施日から1年以内に次を行う必要があります。
初回が5月10日なら、2回目は翌年の5月10日までです。事業年度の区切りだけで管理していると、初年度は期末近く、翌年度は期初にと寄せてしまい、実施日の間隔が1年を超えることがあります。事業年度の要件と、前回実施日から1年という要件の両方を満たさなければなりません。
事業所ごとに実施日を記録しておかないと、ここは落としやすいところです。
外部監査人に任せられない業務があります
ここがこの記事のいちばん大事なところです。
監理支援機関が受入企業に対して行う定期監査は、3か月に1回以上、次の5つを行うことになっています(規則第67条第1号)。
- 育成就労の実施状況を、実地で確認する
- 育成就労責任者と育成就労指導員から報告を受ける
- 育成就労外国人の4分の1以上と面談する(対象者が2〜4人なら2人以上)
- 受入企業の事業所で設備を確認し、帳簿書類に目を通す
- 育成就労外国人の宿泊施設など、生活環境を確認する
この5つはすべて監理支援機関の業務です。外部監査人に代わりに行ってもらうことはできません。外部監査人が同席するのは、年1回以上の同行監査のときだけで、そのときも立場は「一緒に監査する人」ではなく「監査を見ている人」です。
外部監査人を置いたからといって、現場に出る回数が減るわけではない。ここを見誤ると、人員配置の計画から狂います。
なお、労働者派遣の形で育成就労を行わせている場合は、派遣元と派遣先の両方に監査を行うことになります。頻度は、外国人が業務に従事している期間中は3か月に1回以上。派遣元が自社の事業所で就労させていない場合は1年に1回以上です(規則第67条第2号)。
監理支援機関が自分でやり続ける、3つの現場業務
定期監査だけではありません。臨時監査と訪問指導があります。どちらも外部監査人が同行する対象ではなく、外部に任せることもできません。

臨時監査
育成就労計画の認定が取り消される事由に当たる疑いがあると気づいたときは、直ちに監査を行わなければなりません(規則第67条第3号)。
計画どおりに育成就労を行わせていないという情報を得たときはもちろん、不法就労者を雇っているなど出入国関係法令に違反している疑い、労働災害を起こしたなど労働関係法令に違反している疑いがあるときも対象です。
報告の期限が特に厳しいのが、人権侵害のケースです。育成就労外国人への暴行や脅迫などが疑われる情報を得た場合は、迅速に臨時監査を行ったうえで、まず電話などで概要を機構に連絡し、そのうえで2週間以内に監査報告書を提出します。
さらに、実際に人権を侵害する行為が認められた場合は、育成就労外国人と加害者の間で和解があったなどの事情があっても、速やかに報告しなければならないとされています。当事者間で収まったから報告しない、という判断はできません。
訪問指導
こちらは監査ではなく指導です。監理支援機関の役職員が受入企業に赴いて実施状況を実地で確認し、必要な指導を行います。頻度は1か月に1回以上(規則第67条第4号)。
「毎月」と聞くと身構えますが、ずっと毎月というわけではありません。訪問指導が必要なのは、育成就労の期間の合計が1年を超えるまでです。その外国人が1年を過ぎれば、以降は訪問指導の対象から外れます。要するに、受け入れた人の最初の1年だけ、と考えれば大きく外れません。
技能実習制度でも、第1号技能実習(1年目)について同じように1か月に1回以上の訪問指導が義務づけられていました。枠組みとしては引き継がれたもので、育成就労になって新しく増えた負担ではありません。すでに技能実習で受け入れている監理団体なら、いま行っていることがそのまま続くと考えて差し支えないところです。
ただ、実務の感覚として重くなるのは毎年続けて受け入れている企業です。この場合は1年目の外国人が常にいることになるので、その企業への訪問は途切れません。逆に、数年に一度しか受け入れない企業であれば、最初の1年が終われば間が空きます。訪問の回数は、受入企業の数ではなく受入れのサイクルで決まる、という見方になります。
負荷の中身も、定期監査とは違います。訪問指導で行うのは実施状況の実地確認と必要な指導で、育成就労外国人との面談や宿泊施設の確認は含まれません。それらは3か月に1回の定期監査のほうで行うものです。1回あたりの重さは定期監査より軽い、と整理しておくとよいと思います。
なお、外国人が従事する業務の性質上、実地で確認することが著しく困難な場合には、他の適切な方法による確認でよいとされています。すべてのケースで現地訪問が絶対、という作りにはなっていません。
数え方は入国後講習の開始日が属する月を起算月として、各月のいずれかの日に1回以上です。入国後講習だけで就労が始まっていない月は、実施の必要がありません。実施したときは訪問指導記録書を作成して残します(参考様式は追って示される予定です)。
外部監査人に見られやすいポイント
事務所での確認では帳簿書類に目を通されます。そのとき指摘が出やすいのが、監理支援責任者の体制です。
監理支援責任者は事業所ごとに置き、常勤の役員または職員のなかから、その事業所に所属していて業務を適正に行える人を選ぶことになっています。過去3年以内の講習修了も条件です(規則第69条)。
そのうえで見落とされやすいのが、監理支援責任者の側にも独立性の縛りがあることです。傘下の受入企業と密接な関係を持っている人がその事業所の監理支援責任者になっている場合、その受入企業に対する監理支援には関与できません。関与できる別の監理支援責任者を、その事業所に置く必要があります(規則第69条第3項)。
監理支援責任者が1人しかいない事業所で、その人が特定の受入企業と関係を持っているなら、体制として成り立っていないことになります。書類の上では見えにくい一方、帳簿をたどれば分かる類の話なので、あらかじめ整理しておきたいところです。
もうひとつが、指摘を受けたあとの記録です。監理支援機関には、外部監査に協力することと、指摘された点について改善を図ることが求められます。改善の記録が残っていないと、次の3か月ごとの確認で同じ指摘を繰り返すことになります。外部監査の結果は年1回まとめて機構にも届くので(後述)、そこで説明がつかない状態は避けたいところです。
どちらの仕事か——ひと目で分ける

外部監査人がやること
- 監理支援機関の事務所へ3か月に1回以上。責任役員・監理支援責任者から報告を受け、設備と帳簿を確認する
- 受入企業への定期監査に、事業所ごと年1回以上同行し、監査が適正かを見る
- どちらも結果を書類にして監理支援機関へ渡す
監理支援機関がやること
- 受入企業への定期監査を3か月に1回以上(実地確認、責任者と指導員からの報告、外国人の4分の1以上との面談、設備・帳簿の確認、宿泊施設の確認)
- 取消事由の疑いがあるときの臨時監査
- 期間1年以下の外国人がいる受入企業への訪問指導を1か月に1回以上
- 監査報告書を機構へ提出する
こうして並べると、外部監査人に依頼するときに確認すべき点も見えてきます。事業所ごとの訪問と、年1回の同行監査に実際に動けるかどうかです。事業所が複数あれば回数はその分増えますし、同行監査は受入企業側の都合にも左右されます。名前を貸してもらうだけでは、制度が求めている確認は行われません。当事務所でも育成就労の外部監査人の就任をお受けしており、事業所の数と受入企業の数を伺ったうえで、実施の段取りからご相談いただけます。
報告書は2種類あり、行き先が違います
混同が起きやすいのが、書類の扱いです。
監査報告書は、監理支援機関が作ります。提出先は受入企業の住所地を管轄する機構の地方事務所・支所で、期限は監査実施後2か月以内。臨時監査の分も同じ扱いです(人権侵害が疑われるケースだけ2週間以内)。
外部監査報告書は、外部監査人が作ります。提出先は監理支援機関です。外部監査人が機構へ直接出すことはありません。受け取った監理支援機関は、これを帳簿書類として事業所に備え置きます。
ただし、年に1回は機構に届きます
外部監査報告書は、監理支援機関の事業報告書に添付されて、結果的に機構へ届きます。
監理支援機関は、事業所ごとに年1回、事業報告書を機構の本部審査課に提出する義務があります。期限は翌事業年度の5月31日まで。その添付書類として、外部監査の結果を記録した書類の写しを付けることになっています(規則第71条)。訪問指導の記録も同じく添付書類です。
つまり、外部監査で受けた指摘は、1年以内に機構の目に触れます。備え置いて終わりの書類ではない、という前提で受け止めておいたほうがよさそうです。
なお、外部監査報告書の様式はまだ公表されていません。運用要領では「追って参考様式として示す予定」とされている段階です。
電子化については、外部監査の結果を記載した書類も電子データで作成・保存でき、外部監査人からの提出を電子的に受けることも認められています。
よくある質問
Q. 外部監査人に、受入企業への監査を代わりにやってもらえますか?
できません。受入企業に対する定期監査は監理支援機関の業務で、外部に委託できるものではありません。外部監査人が受入企業に行くのは、年1回以上の同行監査の場面だけで、そのときも監査をするのではなく、監査が適正に行われているかを見る立場です。
Q. 育成就労外国人との面談も外部監査人がやってくれますか?
いいえ。育成就労外国人の4分の1以上との面談は、監理支援機関が定期監査のなかで行う業務です。宿泊施設など生活環境の確認も同じく監理支援機関の業務になります。外部監査人が同行監査で立ち会うことはありますが、代わりに実施してもらうことはできません。
Q. 同行監査は、臨時監査に来てもらってもよいのですか?
同行の対象として指定されているのは定期監査(労働者派遣の場合はその監査)です。臨時監査は別の号に定められているため、条文の読み方としては対象外と考えるのが素直です。ただし臨時監査は「定期監査と同じ方法で行う監査」と書かれているため、含めて読む余地がないとは言い切れません。安全側に立つなら、年1回の同行監査は定期監査で実施しておくのが無難です。
Q. 外部監査報告書は、機構に提出しなければなりませんか?
その都度提出する必要はありません。受け取ったら帳簿書類として事業所に備え置きます。ただし年1回、事業報告書を機構の本部審査課に出すときに、外部監査の結果を記録した書類の写しを添付することになります。
まとめ
- 外部監査人が関わるのは、大きく2つの場面です(規則第47条第3項)
- ひとつは監理支援機関の事務所での確認。3か月に1回以上、事業所ごとに行われ、責任役員と監理支援責任者が対応します
- もうひとつは受入企業への定期監査への同行。事業所ごと年1回以上で、見られているのは受入企業ではなく監理支援機関の監査のやり方です
- 「1年に1回以上」は前回の実施日が起算日です。事業年度の要件と両方を満たす必要があります
- 育成就労外国人の4分の1以上との面談、宿泊施設の確認は外部監査人に任せられません。監理支援機関の業務です
- 臨時監査と訪問指導も外部に任せられず、外部監査人の同行対象でもありません
- 訪問指導が必要なのは受け入れた外国人の最初の1年だけです(1年を超えれば対象外)。技能実習の第1号技能実習と同じ枠組みで、新しく増えた負担ではありません
- 監理支援責任者にも独立性の縛りがあり、傘下の受入企業と密接な関係がある場合はその企業への監理支援に関与できません(規則第69条第3項)
- 監査報告書は監理支援機関が機構へ2か月以内に提出。外部監査報告書は監理支援機関が受け取って備え置き、年1回の事業報告書に写しを添付します
外部監査人を選ぶときにいちばん効いてくるのは、事業所の数です。3か月ごとの訪問はそこに比例し、同行監査も事業所ごとに年1回必要になります。ここを整理してから相談に入ると、話が早くなります。



