※この記事は、2026年10月9日時点の法令と出入国在留管理庁(入管庁)の公表資料に基づいています。
永住権の取り消し制度は、2027年4月1日に始まります。対象になるのは、税金や社会保険料をわざと支払わない場合、在留カードに関する義務を守らない場合、特定の犯罪で拘禁刑を受けた場合の3つです。
ただし、当てはまっても原則は「取り消し」ではなく、定住者など別の在留資格への変更になります。この記事では、入管庁が2026年10月1日に公表したガイドラインをもとに、対象になる人・ならない人と、今からできる備えを説明します。
いつから始まるのか
制度が始まるのは2027年4月1日です。根拠は、2024年6月に成立した改正入管法(令和6年法律第60号)です。
運用の指針になる「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン」は、2026年10月1日に入管庁が公表しました。どんな場合に当てはまり、どんな場合には当てはまらないかが、例つきで書かれています。
永住権(在留資格「永住者」)には、在留期間の更新がありません。そのため、許可を受けた後に税金を納めなくなっても、入管が確認する機会がほとんどありませんでした。今回の制度は、この点に対応するために設けられたものです。
出典:出入国在留管理庁「永住者の在留資格の取消しに関するガイドラインについて」
対象になる3つのケース
新しく取消しの理由(取消事由)になるのは、次の3つです。
1. 税金・社会保険料をわざと支払わない
支払う義務があると分かっていながら、あえて支払わない場合です。ガイドラインは、収入や財産、滞納の回数・金額・期間、滞納に至った経緯を見て、支払う意思がないことが明白と認められる場合が当てはまるとしています。金額や期間に、一律の線引きはありません。
- 長く滞納したまま、届出をせずに転居して所在が分からない
- 催告や差し押さえを繰り返し受けても、納める意思を示さない
- 分納や猶予の約束を、繰り返し守らない
- 脱税などで有罪判決を受けた
- 差し押さえを避けるために財産を隠した
対象は、所得税・住民税・法人税・固定資産税などの税金と、健康保険・年金の保険料です。会社の経営に実質的に関わっている方は、法人の税金や社会保険料をわざと支払わない場合も、当てはまることがあります。
2. 在留カードに関する義務を守らない
入管法の義務のうち、罰則があるものが対象です。ガイドラインが挙げているのは、在留カードの携帯・提示、有効期間の更新、紛失したときの再交付の申請などです。
この義務違反は、うっかり(過失)でも取消事由には当たります。ただしガイドラインは、更新を忘れた、携帯していなかったという一度の不履行だけで取り消すことは想定していない、と明記しています。
3. 特定の犯罪で拘禁刑を受けた
殺人、傷害、強盗、窃盗、詐欺、恐喝、危険運転致死傷など、法律で決められた罪で拘禁刑を受けた場合です。対象はすべて故意の犯罪です。刑期の長さは問われず、執行猶予がついた場合も含まれます。
出典:出入国在留管理庁「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン」第2
対象にならないケース
やむを得ない事情で支払えなかった場合や、過失による交通事故は、対象になりません。ガイドラインと入管庁のQ&Aに書かれている内容を表にまとめます。
| 場面 | 扱い |
|---|---|
| 病気・災害・失業で支払えなかった | 当たらない(事業の不振、DV被害、ハラスメントによる離職も例示) |
| 分納や猶予を受けて支払っている | 当たらない |
| 給与から天引きされていたのに、会社が納めていなかった | 当たらない(本人の責任ではない) |
| 過失運転致死傷(交通事故) | 3つ目の「特定の犯罪」に含まれない |
| 罰金刑だけを受けた、道路交通法違反で処罰された | 3つ目の「特定の犯罪」には当たらない |
ひとつ注意があります。「罰金刑なら対象外」は、3つ目のケースに限った話です。脱税などで有罪判決を受けた場合は、1つ目の「わざと支払わない」に当たるとされています。ガイドラインは、この場合を、取り消しになる例にも挙げています。
出典:出入国在留管理庁「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン」第2、「永住許可制度の適正化Q&A」
当てはまるとどうなるのか
取消事由に当たっても、原則は取り消しではなく、別の在留資格への変更です。ほとんどの場合は「定住者」への変更が想定されています。変更の後、永住許可の要件を満たせば、もう一度永住許可を受けることもできます。
実際に取り消されるのは、「引き続き日本に在留することが適当でない」と判断された場合に限られます。たとえば、今後も税金を支払う意思がないことが本人の言動から明らかな場合、脱税などで有罪になった場合、永住許可の後に拘禁刑の前科があり、さらに特定の犯罪で拘禁刑を受けた場合です。
判断までの流れ

- 入管が事実を調査する
- 本人に「意見聴取通知書」が届く(日時・場所・原因とされる事実が書かれている)
- 指定された日に、本人か代理人が意見を述べ、証拠を出す
- 法務大臣が、変更にするか取り消すかを決める
ある日突然、取り消されるわけではありません。やむを得ない事情は、3の場面で資料とあわせて伝えます。正当な理由なく意見の聴取に応じないと、聴取なしで判断されることがあるため、通知書が届いたら放置しないでください。
家族の在留資格
対象になるのは本人だけです。家族であることを理由に、配偶者や子の在留資格が変わることはありません。
ただし、配偶者が「永住者の配偶者等」の在留資格だった場合は、本人が永住者でなくなると前提がなくなるため、定住者などへの変更が必要になります。
出典:出入国在留管理庁「永住許可制度の適正化Q&A」Q12〜Q15、「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン」第4、出入国管理及び難民認定法 第22条の4
入管はどうやって把握するのか
きっかけになるのは、国や自治体の職員からの通報です。今回の改正で、職員が仕事の中で取消事由に当たりそうな外国人を知ったときに、入管へ通報できる規定が設けられました。
通報は義務ではありません。ガイドラインは、税金の徴収の中で、何度催告しても、差し押さえをしても、支払う意思が見られないような場合を例に挙げています。
入管庁のQ&Aは、支払いについて役所に相談に行っただけで通報されることは想定していない、としています。支払いが難しいときは、放置せずに窓口で分納や猶予の相談をしておくことが、結果的に自分を守ることにつながります。
出典:出入国在留管理庁「永住許可制度の適正化Q&A」Q16、「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン」第3
今からできる3つの備え
施行までに確認しておきたいのは、納付、在留カード、記録の3つです。
- 税金・保険料に未納がないか確認する。自分で納める期間(普通徴収)があった方は、住民税と国民健康保険は市区町村の窓口で、国民年金は年金事務所か「ねんきんネット」で、納付状況を確かめてください。永住許可の後、施行前に故意に支払わなかった分も、施行後に分かれば対象になりえます。
- 在留カードの有効期間を確認する。更新は満了日の3か月前から申請できます。引越しをしたときの住居地の届出も見直しておきましょう。
- 支払えなかった事情の記録を残す。診断書、離職票、年金の免除申請の控え、分納や猶予の決定通知などです。
よくある質問
施行前の未納も対象になりますか?
なりえます。ガイドラインは、永住許可の後から施行前までの故意の未払いが、施行後に分かった場合も取消事由に当たるとしています。ただし、施行前の一時点の事情だけで直ちに取り消すものではなく、その後の支払状況も含めて判断されます。
交通事故を起こしたら永住権を失いますか?
過失による事故(過失運転致死傷)は対象外です。対象になるのは、危険運転致死傷など故意の犯罪で拘禁刑を受けた場合です。
長く海外に住んでいると取り消されますか?
今回の3つの取消事由に、海外滞在は含まれていません。ただし、取り消しとは別に、再入国許可の期限には注意が必要です。みなし再入国許可で出国した場合、有効期間は出国から1年です。
まとめ
永住権の取り消し制度は2027年4月1日に始まり、対象は「故意の未払い」「在留カードに関する義務違反」「特定の犯罪による拘禁刑」の3つです。当てはまっても原則は定住者などへの変更で、判断の前には意見を述べる機会があります。
まずは、税金・保険料の納付状況と、在留カードの有効期間を確認しておくと安心です。
参考資料
- 出入国在留管理庁「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン」(2026年10月)
- 出入国在留管理庁「永住者の在留資格の取消しに関するガイドラインについて」
- 出入国在留管理庁「永住許可制度の適正化Q&A」
- 出入国管理及び難民認定法 第22条の4、第22条の6、第62条の2




