永住申請で確認される「入管法上の届出義務」:所属機関・住居地・記載事項変更の注意点
永住申請の準備を進めていくと、「公的義務の履行」という審査項目に行き当たります。納税や社会保険料の納付はすぐ思い浮かぶと思いますが、実はそれと並んで、入管法(出入国管理及び難民認定法)に定められた届出義務の履行状況も審査で確認されます。
この届出義務は永住申請をする方全員に関係します。ただし、届出の種類は在留資格によって異なります。この記事では、具体的に何の届出が対象になるのか、どんな点に気をつければよいのかを整理します。
永住申請で確認される「入管法上の届出」とは
入管法上の届出は、大きく3種類あります。
- 所属機関等に関する届出(在留資格によって内容が異なる)
- 住居地の届出・住居地の変更届出
- 在留カードの記載事項変更届出
このうち住居地の届出と在留カードの記載事項変更届出は、在留資格の種類を問わずすべての中長期在留者に義務があります。所属機関等に関する届出は在留資格によって届出の内容が異なります。それぞれ順に見ていきましょう。
所属機関等に関する届出
所属機関等に関する届出は、在留資格によって届出の内容が異なります。例えば「技術・人文知識・国際業務」「高度専門職」「研究」「介護」「技能」「特定技能」などの在留資格を持つ方の場合、契約機関(勤務先)に関する変動があった際に入管へ届け出る義務があります(入管法第19条の16)。具体的には次のような事由が届出の対象です。
- 現在の勤務先を退職した(離脱)
- 新しい勤務先に就職した(移籍)
- 退職と同時に転職した(離脱と移籍が同時)
- 勤務先の名称・所在地が変わった、または勤務先が消滅した
届出の期限は、これらの事由が発生した日から14日以内です。
届出方法は3つあります。オンラインの届出システムを利用する方法、地方出入国在留管理局への郵送、そして窓口への直接持参です。なお、窓口への持参については、出入国在留管理庁のQ&Aによれば対応していない官署もあるため、事前に確認されることをお勧めします。
注意が必要なのは、派遣社員として働いている場合の派遣先変更も届出の対象になるという点です。また、転職した際に次の就職先が決まっていない期間が生じたとしても、退職の時点で離脱の届出が必要です。
届出を怠ったり、虚偽の届出を行った場合は、罰則の対象となるだけでなく、永住申請の審査においても不利な判断につながります。
住居地の届出・住居地の変更届出
中長期在留者には、住居地を定めた日または住居地を変更した日から14日以内に、住居地の届出または変更届出を行う義務があります(入管法第19条の9)。
ただし、ここで実務上よく使われる「みなし規定」があります。
在留カードを市区町村の窓口に持参して、住民基本台帳法第22条、第23条または第30条の46に規定する届出(いわゆる転入届・転居届・国外からの転入届)を行った場合には、入管法上の住居地の変更届出を行ったものとみなされます。
つまり、引越しの際に市区町村の窓口で在留カードを持参して転入届・転居届を行っていれば、入管への別途届出は不要ということです。総務省のページでも、外国人住民が転入届を行う際には在留カードの持参が求められています。みなし規定が適用されるかどうかは、転入届の際に在留カードが提示されていることが前提となります。
在留カードの記載事項変更届出
在留カードに記載されている「住居地以外の事項」—具体的には氏名・生年月日・性別・国籍または地域—に変更が生じた場合も、届出の義務があります(入管法第19条の10)。
期限はやはり変更が生じた日から14日以内で、届出先は住居地を管轄する地方出入国在留管理官署です。届出時には在留カードを持参し、変更を証する書類(婚姻による氏名変更なら婚姻証明書や戸籍謄本など)を提出します。
結婚・離婚による氏名変更、国籍変更のあった方は、この届出の履歴も確認対象となります。
いつまでさかのぼって確認されるのか
届出の種類によって、確認される期間が異なります。
住居地の変更届出・在留カードの記載事項変更届出
在留資格の種類を問わず中長期在留者全員に義務があります。そのため、日本に在留し始めた時点からこれまでの全期間が対象となりえます。入管庁に問い合わせた際の回答でも、全期間が確認対象との説明でした。
所属機関の届出
就労系の在留資格を持つ方に対して課される義務です。申請時の在留資格(技術・人文知識・国際業務、高度専門職など)に基づいて義務が発生した期間が対象となります。
いずれにしても、過去の届出履歴は申請前に整理しておくことが大切です。
期限を過ぎた届出・届出をしていなかった場合
届出は事由発生日から14日以内という期限が定められており、この期限を過ぎた提出は永住申請の審査において消極的な評価につながります。1日の遅れであっても例外ではありません。
なお、届出をまったく行っていなかった場合の評価の重さが、税金・社会保険料の未納と同等かどうかについては明確ではありません。ただし、法令上の義務違反であることは確かであり、未届出の事実が判明した場合には、申請前に速やかに対処しておくことが望ましいです。
届出漏れに気づいた場合は、発覚した時点で遅延届出を行い、その経緯も含めて状況を整理したうえで申請に臨むことをお勧めします。
よくある質問
Q. 転職後すぐに届出しなかった場合、永住申請は難しくなりますか?
届出を期限内にしていない履歴があると、義務の履行状況に疑義が生じます。ただし、届出漏れの期間や件数、その後に届出を行っているかどうかなど、状況を総合的に判断されます。一概に「不許可になる」とは言えませんが、懸念点として申請前に確認しておく必要があります。
Q. 派遣社員です。派遣先が変わるたびに届出が必要ですか?
はい、派遣先の変更も届出の対象となります。派遣元との雇用契約は継続していても、実際に活動する機関が変わった場合には届出が必要です。
Q. 在留カードを持参せずに転入届をしてしまいました。今からでも対応できますか?
入管法上の住居地変更届出が完了していない可能性があります。住居地を管轄する出入国在留管理局に相談し、届出手続きを行うことをお勧めします。
Q. 無職期間がありました。所属機関の届出はどうすればよかったのでしょうか?
就労先を退職した時点で「離脱の届出」を行う義務があります。その後、再就職した時点で「移籍の届出」を行います。無職期間自体が直ちに問題になるわけではありませんが、届出をしていなかった場合は履行状況の面で確認が必要です。
まとめ
永住申請で確認される入管法上の公的義務は、次の3種類です。
- 所属機関に関する届出(退職・転職から14日以内)
- 住居地の変更届出(転居から14日以内/転入届で代替可)
- 在留カードの記載事項変更届出(氏名等の変更から14日以内)
確認対象期間は届出の種類によって異なりますが、住居地・在留カードの変更届出については日本在留の全期間が対象となりえます。期限を1日でも過ぎた届出は消極的評価につながるため、申請前に自分の履歴を振り返り、漏れや遅延がないかを確認しておくことが大切です。
永住申請の準備を進めている方や、過去の届出状況に不安がある方は、ぜひ一度ご相談ください。



