日本人の配偶者等COE申請——結婚経緯説明書・理由書の書き方(日本人配偶者が海外住在のケース)
「日本人の配偶者等」の在留資格認定証明書(COE)を申請する際、申請書類のひとつとして質問書を提出します。質問書とは、夫婦の出会いから結婚に至る経緯や、夫婦間で使用する言語、結婚式の有無など、婚姻の実態を確認するために入管庁が定めた書式です。この質問書には結婚経緯を記入する欄がありますが、記入スペースに限りがあるため、詳しい内容を別紙で補足するケースがほとんどです。
この別紙が「結婚経緯説明書・理由書」です。「結婚経緯説明書」と「理由書」は別々の書類ではなく、通常ひとつの書類としてまとめて作成します。前半は質問書を補足する結婚経緯説明書として出会いから入籍・日本での生活までを記載し、後半は理由書として「なぜ今、日本への移住を決めたのか」という申請の理由を説明する構成になります。
日本人配偶者が海外在住のケースでは、この理由書としての役割が特に重要です。渡航の経緯・海外での生活・帰国の決意・来日後の予定という4つの項目が、通常ケースにはない記載事項として加わります。この記事では、その書き方のポイントを整理します。
なぜ結婚経緯説明書が必要なのか
入国・在留審査要領(第28節)には、婚姻の審査について次のように記されています。
法律上の婚姻関係だけではなく、当該婚姻が実体を伴うものであることについて、提出資料等により判断する。
つまり、審査は「戸籍上の婚姻事実」だけを確認するのではなく、「実態を伴う婚姻かどうか」まで踏んで行われます。
さらに、最高裁判所(平成14年10月17日判決)は、「日本人の配偶者等」の在留資格について次のように示しています。
単にその日本人配偶者との間に法律上有効な婚姻関係があるだけでは足りない。日本人配偶者との間に、両性が永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真正な意思をもって共同生活を営むことを本質とする婚姻という特別な身分関係を有する者として本邦において活動しようとすることに基づくものと解される。
結婚経緯説明書は、この「婚姻の実体」を審査官に伝えるための中心的な書類です。とくに日本人配偶者が海外在住のケースでは、夫婦が海外で共に生活してきた実態を書類で示すことが、審査上重要になります。
結婚経緯書に書く内容の全体像
書類全体は「結婚経緯説明書」と「理由書」の2つの役割を担います。
前半:結婚経緯説明書
質問書を補足する部分。出会いから入籍・日本での生活までを時系列で記載します。
項目内容①出会いいつ・どこで・どのように出会ったか。紹介者がいた場合はその経緯も含める②交際開始交際のきっかけ・始まり方。遠距離の場合はその状況も③親族への紹介双方の家族への報告の時期・状況④プロポーズいつ・どこで・どのような状況で⑤入籍婚姻届の提出先・日付・その日の様子⑥日本での生活日本で一緒に暮らしていた時期の住居・仕事・日常
後半:理由書
非居住者ケース特有の部分。「なぜ今、日本への移住を申請するのか」という理由を説明します。
項目内容⑦渡航の経緯なぜ日本を離れて海外に移住したのか⑧海外での生活海外での住居・仕事・日常生活・夫婦間の会話言語等⑨帰国の決意なぜ今、日本に戻ることにしたのか⑩来日後の予定住居・生活費・申請人の就労・語学学習の計画
⑦〜⑩は、日本人配偶者が海外在住のケース特有の項目です。以下でそれぞれ詳しく解説します。
非居住者ケース特有の3項目
⑦ 渡航の経緯——なぜ日本を離れたのか
審査官にとって「なぜ日本人配偶者が日本に住んでいないのか」は、自然と生じる疑問です。この点を説明しないまま申請すると、審査の判断材料が不足してしまいます。
渡航の経緯では、日本を離れた具体的な理由と、日本人配偶者が自らの意思でその渡航を選んだことを明確に記載します。
記載すべき内容の例:
- 海外に移住することになった経緯(申請人のキャリア・仕事・家族の事情など)
- 日本人配偶者がその渡航を自らの意思で選んだこと
- 日本を離れた時点での婚姻状況(結婚後に渡航したのか、交際中に渡航したのか)
「なぜ日本を離れたのか」という理由が具体的であるほど、夫婦として一緒に暮らし続けることを選んだという関係の実態が伝わります。
⑧ 海外での生活——婚姻の実体を示す
海外での生活については、夫婦として実際に同居し、生活を共にしてきたことを具体的なエピソードで示します。
記載すべき内容の例:
- 海外での住居(誰と、どこに住んでいるか)
- それぞれの仕事・日常の役割分担
- 家庭内での使用言語(日本語・現地語など)
- 申請人の日本語学習状況(あれば)
- 双方の家族との交流状況
ここで重要なのは、「文章として整っていること」より「写真と連動していること」です。審査官は書類と写真を並べて確認します。旅行・食事会・家族との集まりなど、写真が残っているエピソードを優先的に詳しく書くようにしてください。
⑨ 帰国の決意——なぜ今、日本に戻るのか
「なぜ今このタイミングで日本に移住しようとしているのか」も、審査官が自然に持つ疑問のひとつです。
ここで避けたいのは、「日本人配偶者が一方的に帰国を希望した」という印象を与えることです。申請人(外国人)が日本に来ることを積極的に選んだ、または夫婦で話し合って決めたという流れを記載することで、申請人自身の意思と婚姻関係の安定性が伝わります。
記載すべき内容の例:
- 日本への移住を話し合うようになったきっかけ
- 申請人が日本移住を前向きに受け入れた経緯(どのような言葉を交わしたか等)
- 日本での生活に向けて申請人が取り組んでいること(日本語学習など)
「申請人が自分で日本に住もうと決めた」という流れが伝わる書き方が、審査上の説得力につながります。
来日後の予定欄も丁寧に書く
結婚経緯書の最後には、来日後の予定を記載します。日本在住のカップルの申請と比べ、非居住者ケースでは「来日後どうするのか」が審査上より重視されます。
最低限、以下の3点は明確に記載してください。
- 住居:来日後の住居(誰の名義か、同居人は誰か)
- 生活費:来日後の生活費の見通し(貯蓄・送金・就労収入など)
- 就労・語学:申請人の就労予定または日本語学習の計画
就労予定については、状況に応じて次のように対応します。審査要領では、申請人が日本で就労することにより生活費を支弁する場合、「当該活動に従事することが真に予定されているか」が確認されると定められています。具体的な証拠を準備することが重要な理由はここにあります。
- 内定・雇用予定がある場合:雇用予定証明書または採用内定通知書(日本の会社発行のもの)を必ず添付してください。来日後の生活費を裏付ける資料として、審査上非常に有効です。
- まだ内定がない場合:これまでのキャリアを活かしてどのような就職先を検討しているか、すでに就職活動を開始しているならその活動内容を具体的に記載します。
- 母国の仕事をリモートで継続する場合:オンライン等で業務を続けられる旨が記載された在職証明書を取得し、添付するとよいです。
語学学校への入学予定がある場合は、学校名・コース名も具体的に記載しておくと審査がスムーズです。
書き方の3つのポイント
1. 年月日まで含めて具体的に書く
「いつ・どこで・誰と・何をしたか」という事実を、年月日まで含めて箇条書きで整理することに集中してください。「〇〇年〇月頃」ではなく「〇〇年〇月〇日」と日付まで書けるものは書く、というのが基本姿勢です。文章を整える作業は行政書士が担います。依頼者は事実をできる限り具体的に書き出すことが最優先です。
2. 写真・記録など交際の実態を示す資料と連動させる
入管審査では、審査要領上「交際・交流に関する立証資料」が審査対象として位置づけられています。写真はその代表ですが、それだけに限りません。
手元にある資料を確認し、以下のようなものも積極的に活用してください。
- 結婚式・旅行・家族の集まり・記念日などの写真
- SNSやメッセージアプリのやりとりの記録(出会いから現在まで)
- 渡航記録(パスポートのスタンプ・搭乗記録など、相互訪問の事実を示すもの)
文章で触れたエピソードに対応する資料が手元にあれば、一緒に提出できるよう準備してください。資料があるエピソードを優先的に詳しく書く、という順序で整理すると効率的です。
3. 申請人の「日本への想い」を最後に添える
申請人がなぜ日本に住もうと決意したのか、日本でどのような生活を送りたいと考えているのか。事実の記述が中心になる結婚経緯書の締めくくりとして、申請人自身の言葉で日本への想いを添えることで、書類全体に説得力が生まれます。
よくある質問
Q. 結婚経緯説明書に決まった様式はありますか?
定められた書式はありません。A4用紙で作成し、申請人と日本人配偶者の両名が署名します。行政書士に依頼する場合も、最終的に両名の署名が必要です。
Q. 日本語で書かないといけませんか?
日本語で作成するのが原則です。申請人が日本語を母語としない場合でも、提出書類は日本語で作成します。行政書士に依頼する場合、ヒアリング内容をもとに行政書士が日本語で作成することが多いです。
Q. どのくらいの分量が必要ですか?
ケースによりますが、A4で2〜4枚程度が目安です。非居住者ケースでは、渡航経緯・海外生活・帰国の決意の3項目が加わるため、通常ケースより分量が多くなる傾向があります。
Q. 結婚から申請まで時間が経っている場合はどうしますか?
婚姻後に長期間経過してからの申請は、「なぜ今なのか」の説明が特に重要です。海外での生活が長かった場合は、その期間に何があったか(職歴・子どもの教育・家族の事情など)を丁寧に記載し、申請のタイミングが自然な流れであることを示してください。
Q. 書類を提出した後、追加の調査が行われることはありますか?
入管庁は、提出書類の内容に疑義が生じた場合などに実態調査を行うことがあります。だからこそ、結婚経緯説明書には事実をそのまま正確に記載することが重要です。誇張や不正確な記載は審査上のリスクになります。
Q. 許可された場合、在留期間はどのくらいになりますか?
在留期間は「5年」「3年」「1年」「6月」のいずれかで決定されます。初回のCOE申請では、審査要領上、5年が付与される条件のひとつに「婚姻後の同居期間が3年を超えること」が挙げられています。海外で長期間一緒に暮らしてきた場合でも、初回は1年または3年から始まるケースが多いです。更新を重ねるなかで在留状況が安定していれば、より長い在留期間が認められていく流れになります。
まとめ
- 結婚経緯説明書は、婚姻の実体を審査官に伝えるための中心的な書類
- 日本人配偶者が海外在住のケースでは「渡航の経緯」「海外での生活」「帰国の決意」の3項目が特有の記載事項
- 事実を5W1Hで具体的に書き、写真と連動させることが基本
- 来日後の予定(住居・生活費・就労)も非居住者ケースでは詳しく記載する
- 申請人の日本への想いを最後に添えることで書類全体の説得力が増す
結婚経緯説明書は、フォーマットがない分だけ何をどこまで書けばよいか判断が難しい書類でもあります。この記事が、書類準備の参考になれば幸いです。




