【2026年4月1日運用開始】企業内転勤ビザの提出書類が変更——海外の法人登記・社会保険加入証明が追加、カテゴリー3・4の中小企業が対象
海外の関連会社から日本の事業所に外国人社員を転勤させる「企業内転勤」の在留資格について、2026年4月1日から提出書類の運用が見直されました。出入国在留管理庁が「在留資格「企業内転勤」の提出書類の変更について(令和8年4月1日運用開始)」として公式ページに掲載しているもので、特にカテゴリー3・4に該当する中小企業では、海外事業所の実在や本人の海外勤務実態を示す公的書類が新たに必要になります。
これまで在職証明書や会社作成の資料で対応できていた部分が、公的機関から発行される書類に置き換わるケースも出てきます。準備に時間がかかる書類も含まれるため、今後企業内転勤の申請を予定している企業は、従来どおりの感覚で進めると書類不足で立ち止まる可能性があります。
この記事でわかること
- 2026年4月1日から運用開始された企業内転勤の提出書類変更の具体的内容
- 影響が大きい企業カテゴリー(カテゴリー3・4の中小企業が中心)
- 新たに必要になる書類と、従来書類との違い
- 実務で準備が必要になる点
- 2026年に重なる他の入管制度の変更との関係
2026年4月1日、何が変わったのか
今回の運用見直しの中心は、「海外の事業所の実在と、申請人本人の海外勤務実態を、より客観的な公的書類で立証すること」です。従来は在職証明書や会社が作成した経歴書等で足りていた部分について、公的機関発行の書類への置き換えが求められるケースが増えます。
今回の見直しは法律の改正ではなく、入管庁が運用レベルで提出書類一覧を更新したものです。告知は2026年4月1日付で入管庁の公式ページにPDFとして掲載されています。主要経済紙でも「企業の外国人転勤者、来日前の勤務証明必要に」という趣旨で報道されており、新しい書類要件に沿って申請準備を進めるフェーズに入った企業が多いと考えられます。
対象企業——影響が大きいのはカテゴリー3・4
今回の変更は、企業内転勤のすべての申請に一律で適用されるわけではありません。在留資格認定証明書交付申請と在留資格変更許可申請で、カテゴリー3・4に該当する受入機関が主な対象です。在留期間更新許可申請については全カテゴリー共通で書類が整理されていますが、追加書類の実務負担が大きいのはカテゴリー3・4となります。
カテゴリーは、受入先の企業規模や公的信用度に基づいて4区分されます。
- カテゴリー1:日本の証券取引所に上場する企業、保険業を営む相互会社、国・地方公共団体、独立行政法人、特殊法人・認可法人、公益法人、法人税法別表第1に掲げる公共法人、イノベーション創出企業(高度専門職省令に定める特別加算の対象)、一定の条件を満たす企業等
- カテゴリー2:前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表における源泉徴収税額が1,000万円以上の団体・個人(または在留申請オンラインシステムの利用申出が承認された機関)
- カテゴリー3:前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表が提出されている団体・個人(カテゴリー2を除く)
- カテゴリー4:カテゴリー1〜3のいずれにも該当しない団体・個人
上場企業や大規模事業者はカテゴリー1・2として従来に近い取り扱いが維持されますが、中小企業、スタートアップ、日本に進出して間もない外国企業の日本法人は多くの場合カテゴリー3・4に該当し、今回の変更による影響を大きく受ける層となります。
新たに必要になる主な書類
公式PDFで追加された提出書類のうち、実務インパクトが大きいものを整理すると次のとおりです。
- 転勤前に勤務していた外国事業所の実在を示す書類:公的機関から発行された法人登記(海外の商業登記簿等)、納税状況、取引実績、船荷証券、輸出入許可書、広告等
- 申請人本人の海外勤務実態を示す書類:経歴証明書に加え、社会保険加入証明、戸口簿等
- 日本側の法人の実在を示す書類:登記事項証明書(商業・法人登記)
- 日本側の事業所の実在を示す書類:不動産登記簿、事務所の写真・平面図等
共通する方向性は、「会社自身が作成した書類」ではなく「公的機関から発行された客観的な書類」を基本とすることです。在職証明書そのものが不要になったわけではありませんが、それ単独では海外事業所の実在や本人の勤務実態の立証資料として十分と扱われない場面が増えると理解しておくのが安全です。
なぜ運用が見直されたのか
入管庁は近年、在留資格の種類ごとに「名目と実態の乖離」を防ぐ方向で審査の整理を進めています。企業内転勤については、従来の書類だけでは「外国事業所が名目だけで実在していないのではないか」「申請人が転勤直前に1年以上実際に勤務していたのか」といった部分を十分に確認できない場面があったと指摘されてきました。
今回の見直しは、こうした実態把握の精度を高めるために、海外の公的制度で発行される書類を根拠として求める方向で整理されたものと位置づけられます。同様の方向性は就労ビザ全般で共通しており、技人国をはじめとする他の在留資格でも、名目と実態の整合性を客観的に示す資料が重視される流れが強まっています。
実務で準備が必要になるポイント
カテゴリー3・4の企業で今後企業内転勤の申請を行う場合、実務では次の点に注意が必要です。
海外書類の取得には時間がかかる。海外の法人登記や納税記録、社会保険加入証明は、国によって取得経路や所要期間が大きく異なります。現地での手続きに数週間から1ヶ月以上を要するケースも少なくありません。在留資格認定証明書交付申請の場合は、日本側での申請開始時点で海外側の書類がそろっている必要があるため、社員の転勤スケジュールが決まった段階でできるだけ早く書類の取り寄せに着手することが望ましいと言えます。
社会保険制度の整備状況は国によって大きく異なる。申請人が勤務していた国・地域によっては、日本で想定する形の「社会保険加入証明」が存在しない場合があります。そうしたケースでは、戸口簿その他の身分関係の公的書類、税務関連の証明、給与振込履歴などを組み合わせて勤務実態を示すことになります。どの書類をどのように組み合わせれば立証として十分かは、国ごと・ケースごとに判断が分かれる部分です。
審査期間への影響。企業内転勤の審査期間について出入国在留管理庁から個別の公表値は提供されていませんが、同じ「技術・人文知識・国際業務」系の活動を対象とする技人国ビザでは、全国平均で認定申請が約60日、変更申請が約50日、更新申請が約40日程度で推移しています。追加書類の審査が加わる分、当面はこれまでより審査期間が長めになる可能性があり、東京入管管轄ではさらに長期化する傾向があります。赴任スケジュールは余裕を持って組み立てるのが安全です。
当事務所でも企業内転勤ビザの申請サポート(受入企業向け)を行っており、今回の運用変更を踏まえた追加書類の要否判断、海外書類の取得タイミングの整理、国ごとの立証資料の組み合わせ方の検討などを含めて対応しています。
2026年に重なる他の入管制度の変更との関係
今回の企業内転勤の運用見直しは、2026年から2027年にかけての入管制度の変更の一つとして位置づけられます。入管法改正【2026年最新】いつから何が変わる?永住・就労・手数料の主な変更点を行政書士が解説では、帰化審査基準の引き上げ、技人国ビザの日本語能力要件追加、特定技能「外食業」の新規受入停止、在留手数料の大幅な引き上げ、永住権の取り消し制度、育成就労制度の開始など、施行時期別の変更点を一覧で整理しています。企業の人事・法務担当者は、まず全体像を把握したうえで自社に関わる項目を確認する流れが効率的です。
また、就労ビザ全般では「名目と実態の乖離」を問題視する方向が明確になっており、技人国ビザでも審査運用が整理されています。詳しくは技人国ビザの審査厳格化|「名目と実態の乖離」で不許可になる事例と企業の対応策で、企業側の対応策とあわせて整理しています。企業内転勤の今回の変更も、「実態の裏づけを客観的資料で示す」という共通の方向性にあります。
よくあるご質問
Q1. カテゴリー1・2の上場企業も今回の変更の影響を受けますか?
在留資格認定証明書交付申請と変更許可申請の場面では、カテゴリー3・4に比べて追加提出書類の範囲が小さく、影響は限定的と考えられます。ただし在留期間更新許可申請については全カテゴリー共通で書類が整理されているため、社内の申請フォーマットや添付書類の取り回しは改めて確認しておくと安心です。
Q2. すでに4月1日より前に受付された申請は、新しい書類が必要ですか?
4月1日前に受付された申請は、基本的に従来の運用のまま審査が進みます。ただし審査の過程で追加資料の提出を求められる場面はあり得ます。4月1日以降に新規申請を予定している場合は、新しい書類一覧に沿って準備するのが原則となります。
Q3. 海外側に社会保険制度がない国から転勤する社員のケースはどうなりますか?
社会保険加入証明だけに限定せず、現地で発行されている公的書類を組み合わせて勤務実態を示すのが基本的な考え方です。戸口簿、税務関連の証明、給与振込記録など、国ごとに取得できる書類をリストアップし、何をもって立証するかを早い段階で整理しておくとスムーズです。個別事情によって適切な組み合わせは異なりますので、迷われる場合は当事務所でもご相談をお受けしています。
Q4. すでに日本で働いている企業内転勤の社員の更新申請には影響しますか?
在留期間更新許可申請の提出書類は全カテゴリーで整理されています。カテゴリー1・2の場合は必要書類の範囲が相対的に限定されていますが、カテゴリー3・4の場合は源泉徴収票や納税証明書等の整合性が改めて確認されますので、社内の勤務実態・給与・納税記録が一貫していることを事前に確認しておくと安心です。
まとめ
2026年4月1日から運用が始まった企業内転勤の提出書類の見直しは、中小企業の外国人社員受入実務に具体的な影響を与える内容です。要点を再度整理します。
- 対象:在留資格認定証明書交付申請と変更許可申請で、カテゴリー3・4の受入機関が中心
- 追加される書類:海外の法人登記、納税状況、社会保険加入証明、戸口簿、日本側の登記事項証明書、事業所の実在資料等
- 核心:会社が作成した書類ではなく、公的機関から発行された客観的な書類で実態を示す方向へ
- 実務対応:海外書類の取得には時間がかかるため、転勤スケジュールが決まった段階で早めに準備を開始する
2026年は企業内転勤だけでなく、他の就労ビザ関連の制度でも複数の見直しが重なる節目の年です。自社が該当する部分を整理し、必要に応じて書類準備のスケジュールを前倒ししておくことが、社員の円滑な転勤につながります。
